よくあるご質問
…自己承認感タマゴについて
1…「マズローの承認欲求」との関係?
2…「制度からの承認」に改めた理由?
3…「自己肯定感」と「自己承認感」の違い?
4…「独自性」「承認」の出所?
5…「自己承認感タマゴ」とは?
【ご質問1】
「マズローの承認欲求」との関係?
Q1:このタマゴは、マズローの承認欲求の図と相通ずるものがありそうですね。
A1:識者からよく頂くご指摘なのですが、これは次の三点で誤りであると思っています。
◆一点目◆
マズロー(1908~1970)は、「承認」という言葉を使っていません。
マズロー5段ピラミッドの上から2段目は、esteem[英語]です。
esteem の和訳語に「承認」を載せる紙製の英和辞典は、世界中に一冊も存在しません。
esteem の和訳語は、紙製のあらゆる英和辞典が「【動詞】尊ぶ、重んずる、尊重する、尊敬する、高く評価する 【名詞】尊敬、尊重、好意的な意見 (古英語)意見、評価、判断、鑑定」等です。
esteem の語源は、ラテン語「評価する」(『研究社 新英和中辞典』)
esteem の原義は、「価値を置く」(『ジーニアス英和辞典 第4版』)、「値段を決める」(『ジーニアス英和辞典 第5版』)
マズローの esteem を、「承認」と、日本で最初に誤訳(世紀の大誤訳だと思います)して出版した張本人が誰なのか、ただいま調査中です。
◆二点目◆
「自己承認感タマゴ」における「他者からの承認」「制度からの承認」の「承認」の原語は、大哲学者ヘーゲル(1770~1831)が用いた Anerkennung[独語]です。
◆三点目◆
「承認欲求」という言葉は誤りで、「承認マスト」が正しいと思われます。
「承認」は、「欲求」ではなく、空気や水のような「マスト must」です。
私たち人間にとって、「他者からの承認」は水に等しいマスト(水が無いと4〜5日で死ぬ)であり、「制度からの承認」は食料に匹敵するマスト(食料が無いと2〜3ヶ月で死ぬ)であると思われます。
私たち人間は、「他者からの承認」と「制度からの承認」が得られないと、生き抜くのが困難になる生き物である、と考えられます。
【ご質問2】
「制度からの承認」に改めた理由?
Q2:なぜタマゴの殻「社会からの承認」を「制度からの承認」に改めたのですか?
A2:「制度からの承認」の着想は、「なぜ不登校生の大半が高校進学・専門学校進学・大学進学を志すのか?」「なぜ小中高生は学校の成績がアップすると元気になるのか?」「なぜ若者は就活や婚活に励むのか?」という40年来の素朴な疑問から生まれました。
自己承認感タマゴの殻「制度からの承認」の「制度」は、一条校(*)、企業、自治体、国家などを指します。(*一条校とは「学校教育法・第一条」が定める幼小中高特専大)
「制度」の特徴は、身分証明書(卒業証書、IDカード、パスポート、運転免許証…)はじめ公的書類を発行する点です。
「不登校生が進学を志し、小中高生が学校の成績アップで元気になり、若者が就活や婚活に励むのは、〈制度からの承認〉を得て、自己承認感タマゴをこころに育むためである」というのが、40年来の自問への自答です。
「社会からの承認」の「社会」は、「世間」や「世の中」との代替が可能です(宮台真司「いいね!」のために…朝日新聞2017.12.7)。
「制度からの承認」の「制度」は、「世間」や「世の中」との代替が不可能です。「世間」や「世の中」は、身分証明書はじめ公的書類を発行しないからです。
【ご質問3】
「自己肯定感」と「自己承認感」の違い?
Q3:自己肯定感と自己承認感の違いは何ですか?
A3:「自己肯定感」にエックス線を照射すると、「自己承認感タマゴ」が現れます。
「自己肯定感」の正体は、「自己承認感タマゴ」だったのです。
私が仕事として30年以上とりくんできた「不登校」の文脈では、「自己肯定感」が官民あげて頻用されます。
しかし「自己肯定感」は、その出所も定義も、実は不明なのです。
そして「自己肯定感」は、不登校生の大半が高校進学をめざし大学進学をめざす、その理由も根拠も、説明することができません。
なぜか。「自己肯定感」という言葉の中に、「制度」の概念が含意されていないからです。
「自己承認感タマゴ」は、そうした「自己肯定感」の不全を包摂する概念として、本田が2016年に創出しました。
【ご質問4】
「承認」「独自性」の出所?
Q4:「承認」と「独自性」の出所は何ですか?
A4:自己承認感タマゴの殻と白身の「承認」は、ヘーゲル『精神現象学』が出所です。
黄身の「独自性」は、ライプニッツ「不可識別者同一の原理」を本田が翻案しました。
古いユダヤの格言も、その人にしか為し得ない「独自性」に自信と誇りを持つことの大切さを述べています。
「それぞれの人に、ほかの人にはない貴重なものが備わっている。それぞれのうちに隠れているものを尊重しよう。彼がそれをもっており、友人にはないというだけで」
(シドニー・ブロック『こころの苦しみへの理解』p.405 中央法規)
【ご質問5】
「自己承認感タマゴ」とは?
Q5:そもそも「自己承認感タマゴ」って何なのですか?
A5:「自己承認感タマゴ」は、「自己肯定感」を包摂する概念で、本田哲也の造語です。
自己承認感とは、「独自性を有するこの自分は、この世界に存在し続けていてもよいのだ」と、自己の実存を主体的に承認する、静かな確信です。
自己承認感を育てるには、「制度から承認されている」ことを証明する文書と、「他者から承認されている」という自己の実感の、二次元の「承認」が不可欠です。
「独自性」とは、その人のみが為し得ること。「独自性」への自信と誇りが、人生の難局を突破する力の源泉になります。
自己承認感は、ゆでタマゴをイメージして、殻=「制度からの承認」、白身=「他者からの承認」、黄身=「独自性」からなる三層構造と考えると、わかりやすいかもしれません。
自己承認感タマゴがこころの中に育つにつれて、自助力と共助力が増し、健康度も人間関係も社会関係も、より良くなります。
自己承認感タマゴは、制度からの承認も他者からの承認も希薄になりがちな不登校、ひきこもり、学業不振、発達障害、 LGBT、大病、失業、離婚、貧困などの体験者には、容易に認識されるでしょう。
のちに、自己承認感タマゴは、十分に育つと、意識するのが難しくなります。それは「幸せである」証しかもしれません。
(……以下の資生堂「自己承認感タマゴを育てる学びコツ」より)